みらい富士研修報告
研修: ①水道事業経営実務講習会 平成30年8月21日
②下水道事業経営実務講習会平成30年8月22日
場所:全国町村議員会館 主催:地方自治研究機構
講師:総務省自治財政局準光栄企業室課長及び事務官等
総務省・地方公営企業等経営アドバイザー 遠藤 誠作氏
参加議員:小野由美子
① 水道事業経営実務講習会 平成30年8月21日
第一講義:「総論」水道事業経営の現状と課題
講師 総務省自治財政局準光栄企業室水道・工業用水道事業係長 岡本 徹氏
・人口減少程には世帯数は減少していないことから、人口減少に伴い収入は大幅に減少する一方、供給の必要性はさほど減少しない。ゆえに、人口減少、収入減の状況においても一定の資産維持が必要である。更なる水道事業経営状況は厳しさを増す。
一番収益の上がる自治体規模は、15万~30万人都市で、一番供給単価が高くなるのは5000人以下の自治体である。富士市は一番条件の良い規模の自治体であることがわかる。
給水人口の少ないほど、料金回収率が低下する傾向にあり、赤字団体の割合も、給水人口が少ない団体に多い傾向がある。投資額の減少と共に、管路更新率も低下しており、耐用年数を超えた管路が増大する。しかも、これまでに整備された施設が大量に更新時期を迎える。耐震化率では、基幹管路38.7%、浄水施設27.9%、配水池53.3%。
経済財政運営と改革の基本方針2016
第3章(3)②公営企業会計は、全面的な「見える化」が必要である。公営企業の抜本的な改革(事業廃止、民営化、広域的な連携及び民間活用)の推進、経営戦略の策定を通じた公営企業の経営基盤強化、第3セクター等の改革を着実に進めるべき。
経済・財政再生アクション・プログラム(平成28年12月21日経済財政諮問会議決定)
2.【3】(1)公営企業の広域化等については、「水道事業においては各都道府県における広域化等の検討体制の構築を要請した。公営企業の広域化等については、新たにKPIを設定して進捗の検証を行うとし」となっており、香川県では一県ひと事業とまで言っている状況である。
「経済財政運営と改革の基本方針2018」(抄)(平成30年6月15日閣議決定)
・事業廃止 ・民営化・民間譲渡 ・広域化等 ・民間活用
・事業統合 ・施設の共同設置 ・施設管理の協働化 ・管理の一体化
・客観的な指標等による分析や将来予測に基づく検討が必要である。
・市町村間で比較・共有可能なシミュレーション分析が行われるよう
都道府県派主導するべき⇒経営戦略策定状況の「見える化」を促進すべき
⇒経営比較分析表の策定が必要
総務省としては、地方公営企業等経営アドバイザー派遣事業を行い、また、公営企業経営支援人材ネット事業も行っているので、ご活用いただきたいとのこと。
まとめ:とにかく小さな自治体における水道事業経営の悪化は大変なようだ。富士市はその点、地下水利用、一番有利な自治体規模であるメリットを生かしてもらいたい
第2講義:午後1時~3時 各論:1、地方債計画(水道事業債)
2、公営企業繰出金 3、地方交付税措置
講師:総務省自治財政局公営企業経営室事務官 大水 俊和氏
「改訂版水道事業経営戦略ハンドブック」水道事業経営研究会編集 ぎょうせい
上記本が一冊配布され、その本文と条文の関連を読み上げていく講義方法だった。
123P公営企業の経営にあたっては、独立採算が原則
①財貨又はサービスの対価である料金収入を基本としつつ
②一般会計等が負担すべき経費にかかる一般会計等からの繰入金
③国庫補助制度等政策判断に基づき外部から移入される収入
④工事負担金等経営に伴うその他の収入
により、企業経営に係る経費を賄いうるよう留意すべきであるとのこと、とりわけ、
一般会計からの繰入金に関しては決められた事項にすべきであるとのこと
たとえば、①公共消防のための消火栓に要する経費 ②公共施設における無償給水
に要する経費 ③資本費負担の軽減を図るための出資(ダム・広域化)に要する経費
まとめ:
水道事業の災害復旧に係る国庫補助金に関しては、通常は2分の1であるが、激甚災害においては、別途、「激甚災害に対処するための特別財政援助等に関する法律」等があり、災害での被害には、国がちゃんと手当てしていると実感した。
その分、非常に厳しく公営企業会計の見直しを地方公共団体に迫ってきているということを感じたが、富士市の水道事業に関しては、国の言っていることはやっていると思われる。この優位性を生かし、富士市は、全国に先駆けてのモデルとして、水道自治体ビジネスを行っていくべきなのではないかと感じたしだいである。今度の9月議会では、企業会計決算委員会であるので、今回学んだことをしっかり生かしていきたいと思う。
② 講義:「水道事業の経営改革と広域連携」
講師:総務省地方公営企業等経営アドバイザー 遠藤誠作氏
遠藤氏は、元福島県三春町企業局長であったが、そこでの改革が評価され、農水省金融課勤務の後、+事務吏員、在職中に東北大学大学院修了、国の厚生科学審議会等の委員から、現在、北海道大学大学院・公共政策学研究センター研究員、福岡県田川市参与、総務省や全国簡易水道協議会アドバイザー等々を引き受けられるという経歴の持ち主である。
とにかく、経営改善に取り組む、上水道と下水道、浄化槽は、サービスが同じなら、負担は同じであるべきであるということから、水道料金の応分の負担にするため、議会、市民の説得に奔走する。
公営企業での経験は、行政の世界でも生きる。廃止される県立病院をまちに移管させて、3年で軌道に乗せた。病院職員の現場感覚と経験豊富なゼネコン技術者、改革志向の発注者が一つになると良い病院ができる。
今の経営形態でやっていけるのだろうか!⇒広域化・協働化を考えなければいけない時代になっていることをもっと自覚しなければいけないと力説した。
水ビジネス企業と戦略的パートナーシップ契約を結び民間のノウハウを導入するなどの機関人材をスカウトすべき。スピード感をもって仕事すべきと力説された。
ご自身の経験から、経営改善はやる気しだいでできると言い切っていたのが印象的でした。
まとめ:最大の問題は、カネではなく水道に責任感を感じるひと(人材)がいないこと!! 一定規模の人数と良質かつ経験豊富な人材の存在が重要という意見はもっともと感じる。責任感を持って仕事をしろ!絶対自分のためになる!公営企業会計を学べるのは公務員人生にとってものすごいチャンス!との講習を受けている多くの自治体職員への激励は素晴らしかった。そうすれば道は開けるとの経験談義は感動であった。富士市は、地下水を使っている、もっとも有利な自治体規模であるというメリットを生かし、先進的な「水ビジネス」を展開してもらいたい。
2、 下道事業経営実務講習会 平成30年8月22日
第一講義:「総論」(10:30~12:00)
①下水道事業の概要
②下水道経営における取り組みの動向
(法適用の推進、経営戦略、その他)
講師 総務省自治財政局準光栄企業室課長補佐 川畑 充代 氏
① 地方公営企業の現状
事業数は、平成28年度末現在8,534事業で、前年度に比べ80事業0.9%減少している。事業別に見ると、下水道事業3,639事業42.6%が最も多く、ついで、水道事業2,041事業23.9%、病院事業634事業7.4%となっている。
下水道事業の中で、浄化槽の課題は、住宅など建物毎に設置される分散型の汚水処理施設であり、設置費用が安く、人口分散地域で効率的な汚水処理ができる。現時点の課題は、単独処理浄化槽470万基が残存しており、合併処理浄化槽314万基への早期転換が求められる。人口分散地域では、浄化槽の更なる活用を図るべきである。
地方公営企業の決算規模
地方公営企業決算規模は、平成28年度16兆9339億円で、前年度と比べ1543億円0・9%減少している。下水道は5兆4658億円と最も多く、ついで病院事業4兆5577億円、水道事業3兆9850億円である。
建設投資においても、下水道が一番多く、次いで水道事業、病院事業、交通事業である。さらに、今後、処理場、管路施設などのこれまで整備された施設が大量に更新時期を迎える。
経済財政運営と改革の基本方針2018(平成30年6月15日各期決定)(抄)
第3章「経済・財政一体改革」の推進
4(2)「上下水道においては効率的な整備・管理及び経営の持続可能性を確保するため、各自治体の経営状況の地域差を「見える化」し、広域化や共同化、コンセッションをはじめとする多様なPPP/PFIの導入、ICT活用等を重点的に活用する。」
「持続的経営を確保する方策等を検討し、具体的な検討を年内に策定する。」
下水道事業に求められる経営努力
広域化・共同化・最適化・老朽対策・民間活用など、収入を確保するための努力と、支出を最小にするための取り組みが必要である。
「経営比較分析表」を活用した公営企業の全面的な「見える化」の推進が必要である。誰もがわかりやすいイメージ的グラフ化で表現することも必要。
「経営戦略策定ガイドライン」の策定と公表をした。このことから、投資・財政計画の策定を行い、経営基盤強化と財政マネジメントの向上を図るべきである。
すべての公営企業で、経営戦略策定が必要である!!と強調した。
第2講義:午後1時~3時
各論:1、下水道の種類と現状 2、下水道整備の財源(下水道事業債、地方債計画) 3、公営企業としての経営(経費負担区分、繰り出し基準) 4、下水道事業の経営状況と課題
講師:総務省自治財政局公営企業室事務官 藤野 雅史 氏
下水道ハンドブック平成30年度版(下水道事業経営研究会編集)ぎょうせい印刷
上記本を一冊ずつ配布され、内容を読み上げ、条文と照らし合わせる形で講義が進められた。
下水道の種類では、総務省が広義の下水道全体を担当し、公営企業として実施されているものの打ち、下水道法上の下水道を国土交通省が担当、下水道法上の下水道以外の農業・漁業・林業他集落排水施設は農林水産省が担当、一般会計等で実施されているもののうち浄化槽は環境省が担当、となっている組織図として説明された。
第3講義の遠藤誠作氏の講演は、主たる主張は、公務員の士気を高めるものであったと感じた。「下水道課は、決して中軸から離れた課ではなく、公営企業会計を学ぶには最善の課である。真摯に取り組み経営改善を図ることができれば、すばらしい実績になる」と、参加者の多くの公務員の皆さんに向かって講演された。やりがいとやることがいっぱいとのこと。それだけ、地方公共団体において、下水道事業は大変な負
担となっているのだと実感した。
まとめ:国としては、下水道事業の一般会計からの繰入金が多い自治体に対して、経営改善を図る努力を強く促していると感じました。
富士市も汚水処理長期計画の見直しにより、国の指針に沿って計画の見直しが図られたのだと改めて認識します。富士市公営企業会計予算書や決算書を改めて見直し、企業会計の指針にのっとっていることを改めて確認し、国の指針にいち早く対応していると感じました。
ただ、富士市の下水道布設計画においては、長期計画の見直し以上に、更なる見直しが必要なのではないかと感じる昨今です。たとえば、富士市全体の汚水処理計画と企業会計経営戦略と市民の負担感の公平化を俯瞰して見直してみるなどです。企業会計といっても市民の大切なお金を預かるのです。国土交通省と環境省と管轄が違うことや、それらの省庁の力の差などが富士市にも直接反映することのないよう、市民にとって何がベストかの視点を忘れずにこれからも見ていきたいと感じました。