みらい富士研修報告
研修: ①人口減少・地域消滅の時代における地方議会改革
②本格的少子高齢社会における介護保険と健康対策
日時:平成30年8月8日午前①・午後②
場所:TKP東京駅八重洲カンファレンスセンター
主催:地方議員研究会 講師:城西大学教授 伊関友伸氏
参加議員:小野由美子
講師:城西大学経営学部教授 伊関友伸氏
1987年埼玉県庁入庁 2004年4月から城西大学経営学部助教授、内閣府「公立病院に関する財政措置の在り方等検討委会委員」、総務省「地域医療の確保と公立病院改革の推進に関する調査研究委員」、福祉経営博士
研修①人口減少・地域消滅の時代における地方議会改革
・これからの地方自治体の最大の課題は、本格的少子高齢社会の到来、地方の自治体の消滅をいかに防ぐかである。
・役人は与えられた作業を確実にこなすことは得意であるが、時代の大きな変化に対応できない。削減だけが得意である。
・議員の不適切発言から、自治体病院の医師が退職する事態が起きている。一般職の職員は怒鳴っても辞めないが、売り手市場の医師はいつでも大量にやめてしまうことを認識しておくべき。議員の不当な処方箋要求から退職する医師もいた。
・都市部における高齢者の急増が確実。そのことから、医師・看護師・介護士などのマンパワーや入院病床・介護施設など医療・介護施設などの医療・介護資源の不足が予測される
なぜ日本の合計特殊出生率が低いのか
①非正規雇用など若年層の雇用不安がある。非正規雇用では、家庭をもって家族の生活費を賄うだけの収入がないことから結婚しない若者が急増している。今も、安定した収入のある若者は結婚して子供を複数待っている。
②女性の晩婚化と出生数の減少している原因に、日本では、出産したら仕事をやめなければいけない現実がある。非正規雇用である若い女性たちは、正社員のように育児休暇が保証されていないため、現在、出産と同時に仕事を辞める確率は昔に比べ高くなっているのが現実である。
③若年層の東京圏への移住傾向がなぜ出生率を下げるかというと、東京圏では、そもそも合計特殊出生率が非常に低い、その低いところに集まることからさらに低くなってしまう。
・子供の数が急激に減少することから必然的に働く若者が減ることになる。
・高齢化が進み看護師・介護士が必要となる時に、働く若者たちが激減することになる。看護師不足で病院が経営できなくなる事態も考えられる。
・看護師・医療介護士の人材をいかに集めるか、この現実に対応できている地方自治体はない。管理部門が強い今の体制では、現場軽視の政策運営が行われる危険がある。人材育成に向けた研修制度の充実が急務である。現場職員の抑制では逆に社会的コストが増大している。
・病院が独立採算するために、昭和の時代のように薬や注射で賄える時代ではなくなってきており、サービスを提供して収益を上げる必要があり、人手が必要になる。
・職員を増やし、研修を行い、職場環境をよくすることで、サービスの充実を図り収益を上げる。人件費の抑制は病院経営を破綻させる。
まとめ:合計特殊出資率を高めるには
・正規雇用を増やす。・女性が子供を産みやすくする。・都市への若者の流出を抑える、都市から若者を受け入れる。
正規雇用を増やせば、若者は結婚しやすくなる。地方における正規雇用を増やすことが大切である。(十分に分かっていることであり、どうすれば正規雇用が増えるのが課題)
伊関先生は、医療・福祉の雇用誘発係数は0.12と高く、経済波及効果は2.38であり、
東京では雇用が減っているが地方では増えている唯一の職種である。地方が食い込むのはこことのこと。東京の介護施設が地方に来ているのは事実その動きは加速すると思う。いまや、地域の産業としての病院や福祉施設の誘致を考えるべきというのはうなずける。
・「お客様」の住民から「当事者」としての住民へ意識変革が絶対必要、批判だけでは何事も動かない
・首長オール与党では問題を掘り下げることができない。自治体の質が上がらない。二元代表制をもっと大事にする必要がある。
首長の政策を離れて、政策問題そのものに議会として取り組む、問題を掘り下げ、適切な解決策を議会として発見していく必要がある。オール反対、オール賛成ではない議会を、議論する議会を大切にするというのはもっともなこと、働く議会大賛成である。当事者にならければいけない市民と、問題解決のために議論が必要な議会と病院職員一同が一緒になってセミナーを開き、「地域の病院を残すためには」でグループ討議した北海道八雲町の取り組みが説明された。議員がリーダーとなりグループ討議を盛り上げた。これらの解決のため、女性議員と若者世代の議員は必要とのこと。ここにも大いに賛成である。社会変化に対応できる自治体が生き残る!
②本格的少子高齢社会における介護保険と健康対策
2018・8・8地方議員研究会②午後2:00~5:00
爆発的な高齢者の増加に対し、絶対的に医師・看護師・介護士などのマンパワーや入院病床・介護施設などの医療・介護資源が不足する。財源不足も深刻となる。
実は、高齢化問題は女性の健康・医療・介護の問題である。平均寿命と健康寿命の間には、平成25年の統計で、男性約9年、女性で約13年の差がある。
左記の統計グラフには驚いた。もちろんいろいろな要因はあるのだろうが、伊関先生は、はっきりと、「医師の少ない県の方が長生きで元気にしている」と言っている。
男女ともに、健康寿命が長いのは、1位は山梨県、2位が静岡県である。
両県との医師の数は平均以下で、人口10万人に対して医師の多い京都府は、男女十下から数えて2・3番目である。
医師が一番少ない埼玉県の健康寿命も決してそう悪くはない。
この現象について伊関氏は、今の医療収入の在り方が、患者に寄り添ったものになっているのかと疑問を投げかけている。
そうした中、健康問題についての新しい考え方が提示されている。
それが
、フレイル(虚弱)という海外の老齢医学分野で使用されている「frailty(フレイルティ)」の日本語あてであり、「虚弱」「老衰」「脆弱」を意味する。日本老年医学会では、フレイルに対し、正しく勧誘すれば戻るという意味があることを踏まえ、共通した日本語とする。
フレイルは、加齢に伴う心身の変化と社会的環境的な要因が合わさっている。活動量の低下、社会交流機能の減少、身体機能の低下、筋力の低下、低栄養、と認知機能の低下、口腔機能の低下などがあげられる。
フレイルの重症化を避けるには、バランスの良い食事、個食よりも供食、口腔機能のケア、日常生活に運動の要素、社会活動への参加などがある。
サルコペニアを起こさない。第1次サルコペニア、第2次サルコペニア
ロコモティブシンドロームの日本語名は「運動器症候群」
口腔ケアによる機能復活―様々な病気の減少
生活習慣病・糖尿病予防対策・たばこ問題・受動喫煙問題
大きな流れは、原則屋内禁煙にする方向しかないと思う。
介護保険制度
介護保険制度は、市区町村が運営主体(保険者)となり、国と都道府県が市町村を支援する制度であり、被保険者はすべての40歳以上の者、65歳以上が第1号被保険者で、40歳から65歳が第2号保険者である。第1号は原因を問わず要支援・要介護状態になったら介護サービスを提供、第2号は特定疾病が原因で要支援要介護になった場合に介護サービス受けられる。
受給者割合は、圧倒的に女性が多い。その理由は、男性が要介護になっても妻が見ている場合が多いが、夫に先立たれた妻はひとりで老後を過ごす時間が長く、支援を必要とするからである。女性の90歳以上は81.2%が介護支援を受けている。
このことから、今後の調整交付金の交付基準の見直しとして、現在の2区分(65歳以上74歳までと75歳以上の区分を見直し案では、①65~74歳②75=84歳③85歳以上にしていく必要があると判断している。
また、収入の高い高齢者には相応の負担をお願いする方向になっていて、逆に所得の低い層には、さらに負担を少なくする方向である。
そして、自立支援・重度化防止に向けた市町村の保険者機能の強化等の取り組みの推進が大切となってきている。
まとめ:保険者機能を高めるために、担当職員の専門性を高める、スキルアップさせるための研修は必須!地域包括ケアシステムの成功には、介護予防支援事業の充実を地域で動かしていくシステム作りが大切と強調されていた。
富士市においては、ご近所さんの体操教室やいきいきサロン、悠容クラブの充実がこれからの課題であると痛感した。まだまだできることがある。
8月28日には市長からの依頼で伊関教授が富士市に招かれ勉強会が行われる。楽しみである。