自治体決算の基本と実践、財務諸表の見方考え方:小野由美子研修レポート

小野やすまさ後援会

2017年07月28日 05:11

 富士市市政報告書の巻末、付表に掲載されている財務諸表の味方と活用の仕方の勉強会でした。実際の決算委員会でもほとんど使われたこともなく、財政課から説明されることもない箇所です。なので、決算書にではなく、市政報告書の巻末になっています。
 しかし、総務省は公共施設が耐用年数を迎えつつある現在、大変重要な指標として、全国自治体に、統一的基準での財務諸表を作成し、公表することを義務付けました。そのものの見方考え方をいち早く勉強してきました。
 大変に難しい内容でした。専門家の方から見れば大変に拙いものであることご容赦ください。
みらい富士研修レポート
(研 修 名) 平成29年度市町村議会議員研修 自治体決算の基本と実践
(会  場) 全国市町村国際文化研修所
(期  間) 平成29年5月24日(水)~25日(木)の2日間
(出席議員) 小野由美子
(主催機関) 全国市町村国際文化研修所 JIAM

講師:稲沢克裕博士 英国勅許公共財務会計(CPFA)
関西学院大学専門職大学院経営戦略研究課教授
   東北大学大学院教育学研究科博士課程中退。現在、会計に強い公務員を目指すプログラムを担当。群馬県庁にて、地方税、予算編成(財政課)の仕事に従事。NPM改革の進む英国に2年間駐在した後、大学教員に転職。英国自治体の行財政改革を研究テーマとし、実践活動としては、外務省政策評価アドバイザリー委員、総務省 地方公会計の活用のあり方に関する研究会委員、名古屋市行政評価委員長、川西市経営評価委員長など、国、自治体にて、数多くの公職を歴任。主な著書に「英国地方政府会計改革論」(ぎょうせい、2006年)、「自治体における公会計改革」(同文舘出版、2009年)、「自治体 歳入確保の実践方法」(学陽書房、2010年)、「増補版 行政評価の導入と活用」(イマジン出版、2012年)、「自治体の財政診断と財政計画」(学陽書房、2013年)、「一番やさしい地方交付税の本」(学陽書房、2016年)がある。

自治体決算の基礎  (写真撮影全面禁止でした)
①ひと:人口減少、高齢社会
②もの:道路や橋、施設も高齢化する
③おかね:これからの地方財政の課題①、国債残高・地方債残高合わせて1000兆円を超える
2、人口減少による財政的インパクト  3、民生費によるクラウディング・アウト
1)財政民主主義:
・租税や公債など住民に負担を負わせる自治体の行為
・歳入歳出の結果は決算という形式にして、議会の承認を得なければならない
・歳入・歳出は予算という形式の議決を得なければならない。
議決のないところに支出なし
2)予算項目はすべて歳入歳出決算書にある
3)決算から予算へ:連続性で考える→検討しますと答弁のあった事柄が予算にどのように反映されているのか、どのような検討がなされたのか質問する
4)決算の流れ:①会計管理者による決算調整 ②監査委員による審査・意見
      ③議会による審査・認定又は不認定 ④(総務大臣)への報告 
      ⑤住民に公表
5)決算書(法定)とは:①歳入・歳出決算書 ②歳入・歳出決算事項別明細書
          ③実質収支に関する調書 ④財産に関する調書
6)議会による決算認定:①決算書①~④に加えて ②決算審査意見書
          (監査委員作成) ③主要な施策の成果報告書※大事
3、法定書類についての用語基礎知識 :用語説明
4、決算審査における着眼点

[基本方針]①予算審議の目的は達成されたか、質疑は遵守されたか

      ②住民の支店から審査する:予算執行により財政状況はどうか?
       行財政改革は進んだか、行政サービスは目的を達成したのか

      ③決算全体の規模から全体の構成、そして各事務事業を見ていく

 [視点]  決算審査においては、財務数値、財産、成果のそれぞれの視点。

      1)財務数値の視点:①決算規模の年度比較等 

                ②決算収支状況の年度比較

                ③予算の執行状況の分析 歳入・歳出

                ④財政構造の分析 歳入・歳出・財務比率

地方債及び債務負担行為状況年度間比較
       2)財産の状況 四日市市では、指定管理者のモニタリングレポートがすべて議会に提出される。
               出資法人が実施している事業の必要性を検証
       3)成果の検証:行政サービスの目的は達成されたのか、効率性、経済性はどうか
5、決算統計の分析の仕方
    歳入 地方税:自分で集めて(自主財源)、自由に使えるお金(一般財源)
       地方交付税:他人からもらって(依存財源)、自由に使えるお金(一般財源)
       国庫支出金:他人からもらって(依存財源)、自由に使えないお金(特定財源)
       地方税:他人からもらって(依存財源)、自由に使えないお金(特定財源)
    歳出 目的別歳出:総務費、民生費、農林水産費、土木費、教育費、公債費
       性質別歳出:人件費、扶助費、公債費、普通建設事業費、物件費


第2部 公会計新制度改革の理解 :発生主義、アカウンタビリティ
   地方公共団体における行政改革の更なる推進のための指針(平成18年8月31日総務事務次官通知)
   ☆平成26年4月30日1741市区町村で統一的な基準を設けることが義務化
    複式簿記の導入 固定資産台帳整備の義務化 
   平成28年度決算を元に平成29年度中に財務書類を開示、又は、平成29年度決算を元に平成30年度中に開示。
多くの自治体では、平成30年3月末までに開示予定
※富士市では、平成25年度から総務省方式改定モデルで「普通会計・連結財務諸表」を公開しているが、平成29年度、統一的な基準で公開できるように、現在準備中とのこと、つまり、平成28年度決算より、全国統一の新方式でが出されていくとのことです。
地方公会計改革の効果と分析の視点
住民に対する開示による効果 ①透明性の向上 ・連結ベースの財政状況・世代間負担の状況を明示 ・コストと住民負担の関係を明示 ・税金の財源とその使途を明示 
行政経営への活用による効果 ②マネジメント力の向上 計画の目標設定・進捗管理、他団体との比較 ③資産・債務の適切な管理 等々
※最終日は、財務書類4表の理解と分析として、実際の書類を使って見方と分析の仕方を学んだ。
第3部 行政評価
行政評価の目的には、①定量的評価→業績測定→非財務数値の数値化と、
②定性的評価→ロジック分析→妥当性、有効性、効率性の評価
政策体系と行政評価 行政評価の活用→予算編成への活用:事務事業評価→主要な施策の成果報告書→総合計画の進捗管理への活用→施策評価
PDCAサイクルを行うことで、事務事業評価を、施策評価に上げ、さらに、総合計画の評価につなげていくということと理解しました。
このあと、名古屋市の事務事業評価表を使って、分析のトレーニング
※ 成果とは何か?:行政の仕事によって、住民生活の質や地域の状態がどう変わったか。
※視点
①事業の妥当性に関する説明・公的関与の範囲に関するチェック
②有効性に関する説明
③効率性のうち「実施主体の妥当性」の説明
④効率性のうち「経済性・手法の妥当性」の説明
⑤総合評価の意味:A計画通りに進めるのが妥当 B改善の検討 C見直しの検討
        D抜本的見直し、休・廃止の検討
まとめ
 大変に難しい内容であり、かつ、盛りだくさんのため、とても厳しい研修でした。
富士市議会だけでなく、全国的にも、決算委員会よりも予算委員会の期間が長く、重視されているような印象を受けるが、今回の研修を通して、むしろ決算委委員会のほうが重要なのではないかと思えてきました。
 富士市は、平成28年度決算の全国の統一的基準での財務諸表を作成中と聞いています。全国統一基準であることから、他団体との比較が容易になり、いち早く行う富士市を全国が注目しているといっても過言ではないでしょう。
 9月平成28年度決算議会に臨む姿勢と、新基準の財務諸表の見方と分析の仕方、問題点の発見法などを学べたことは大変よかったです。また、事業評価への取り組み方と目的等々が総合的に学べたことは大変意義深かったと思います。
 9月議会では、必ずや今回の研修の成果を生かしていく所存です。

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